コンペ表彰式開催レポート_第4回AIエッジコンテスト:FPGAを使った自動車走行画像認識_経済産業省・NEDO

2021年2月13日(土)、第4回AIエッジコンテスト(実装コンテスト②)『FPGAを使った自動車走行画像認識』の表彰式が開催されました。 本イベントは主催者によるスピーチや結果発表に加え、入賞全6チームによる解法プレゼンテーション&質疑応答の時間も設けられました。 コロナ禍にあってオンラインでの開催となりましたが、参加者の熱意や主催者の思いが伝わる素晴らしい表彰式となりました。 まずはコンテスト主催者である経済産業省・刀禰正樹(とねまさき)氏と、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)・伊藤隆夫(いとうたかお)氏の挨拶でイベントがスタート。


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主催者のあいさつ

[018]Competition Report-1

経済産業省 商務情報政策局 情報産業課 デバイス・半導体戦略室長

刀禰正樹(とねまさき)氏

「経済産業省は日本の半導体・デジタル産業の発展のために、AIエッジコンテストは大変重要な取組だと考えており、これまで回数を重ねて参りました。 現在、政府としてはデジタル革命を2020年代の大きな柱として考え、デジタル産業を支える半導体の重要性は言うまでもありません。その半導体の発展のために、経済産業省では二つの取組を軸に戦略を立てております。 一つは日本自身の半導体の供給やエコシステムの強化です。日本の半導体産業全体が発展していくために、研究開発支援などにも取り組んでいきたいと思います。 もう一つはデジタル化・デジタル市場をいかに活発にしていくかということです。そのためにも5G、ビッグデータ、ハイパフォーマンスコンピューティングによるデータセンター、スマートシティ、スマート工場、遠隔教育、遠隔医療など、さまざまなデジタル・半導体・エッジAIを組み合わせたソリューション・アプリケーションを生み出す必要があると考えています。 あわせて半導体の設計開発にも取り組み、日本の中から設計能力のある人材を輩出していきたいと思います。日本が、エッジコンピューティングの最先端を走り、課題解決先進国となれるように半導体の設計力向上・強化に取り組んでまいります。 本日表彰される方々にはぜひ日本の半導体の設計力向上に貢献していただきたいと思いますので、今後のさらなるご活躍を期待しております。」

[018]Competition Report-2

国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)

IoT推進部 統括主幹

伊藤隆夫(いとうたかお)氏

「私が所属しておりますIoT推進部は、IoTを始めとした電子情報通信システム分野、及びものづくり分野の技術開発に取り組んでおります。 特に私が担当しているプロジェクトは、これから爆発的に増大するコンピューターのデータ処理を、現在のクラウド集約型からエッジ分散型にシフトできるよう、ネットワークの端末で中心的なAI処理を行うという革新的なAI技術開発に注力しています。 新たなシステムを構成するハードウェア・ソフトウェアの技術開発を推進するために、その技術を使いこなすことができ、かつキラーアプリを生み出すことができる人材の発掘や育成も重要な課題と位置づけています。そのような人材を育成することを目的として、私たちは経済産業省と共にこのコンテストを立ち上げました。 今回は約300名、計37チームにご参加いただき、非常に高いレベルで競われたと聞いております。コンテストに参加いただいた方々、上位入賞された方々、そしてコンテスト開催においてご協力いただいた企業・団体の皆様に御礼申し上げます。」

コンテスト概要・目的の説明

次にコンテスト事務局・大渕栄作(おおぶちえいさく)氏より、コンテスト概要・目的の説明がありました。

[018]Competition Report-3

「人工知能(AI)技術の進歩に伴い、AI技術を用いた画像認識や自動運転、自然言語処理などの社会実装が急速に進んでいます。特にエッジコンピューティング分野ではより高効率にAI技術を実現する必要があることから、我が国でもLSI・FPGAを始めとするAI処理を加速するためのハードウェアの人材、産業育成が急務となっています。 こうした背景の中で、これまでのソフトウェアを中心としたAI技術開発に加え、AIハードウェアも視野に入れた人材育成・スタートアップ育成、さらにはこれら技術を活用した産業育成を図るべく、今回のコンテストを実施しました。 本コンテストでは、FPGAを用いたAIハードウェア開発を行い、ハードウェア・ソフトウェア(ネットワークモデル及び、システム最適化)を含めたエッジコンピューティングを意識したハードウェアシステム開発を課題として設定しています。」

コンテスト概要

■課題

  • (アルゴリズム開発)車両前方カメラ画像から、ピクセルレベルで物体に対応する領域を分割するアルゴリズムを作成する

  • (アルゴリズム実装)ハードウェアアクセラレータなどの設計を行い、ターゲットのFPGAボードへのアルゴリズム実装を行う

■提供データ

  • (学習/評価)車両前方カメラ画像

  • (学習)物体に対応するピクセルレベルで分割ラベル付けされた領域

  • (学習)画像のメタ情報(走行ルート/ 時間帯等)

■プラットフォーム

  • Avnet社Ultra96 FPGAボード

■識別対象

  • 乗用車、歩行者、信号、車道・駐車場

■評価

  • 評価は、対象FPGAボードの処理速度です。

  • ただし、評価の対象となるためには、セグメンテーション結果(=評価用画像データに対する予測結果)の良さが基準以上を満たす必要があります。

  • セグメンテーション結果の良さの尺度にはIoUを用い、IoU=0.6以上を要件基準とします。(アイデア賞はこの限りではありません)

  • IoUの要件基準の値は変更する可能性があります。

■表彰等

<処理速度賞>

1位:トロフィー、賞金40万円+Google Cloud Platformクーポン10万円分

2位:トロフィー、賞金20万円+Google Cloud Platformクーポン5万円分

3位:トロフィー、賞金10万円+Google Cloud Platformクーポン5万円分

<アイデア賞>

トロフィー、賞金10万円(最大3チーム)

選考基準

コンテスト概要に続き、コンテストの選考基準についても発表がありました。

■アイデア賞

アイデア賞はレポート及び面談(5分間のプレゼンと審査委員会からの質疑応答)の結果を踏まえて評価させていただきました。

■処理速度部門

IoU0.6という精度を達成した方々を処理時間でソートし、上位1~3名の方々に処理時間部門賞を授与させていただきました。

受賞者の発表

いよいよ、今回の受賞者の発表と表彰の時間です。

今回のコンテストの登録人数は292名、投稿チーム数37チーム、投稿回数879件。ハードウェア実装に関わる、特にエッジAIを意識したコンテストということで、AI学習及びFPGA実装の両方が必要となる難易度の高いコンテストとなりました。 「前回の実装コンテストである第2回(FPGAを使った自動車走行画像認識:開催期間2019年11月18日~2020年3月31日)と比べてかなり高い認識精度を設定しましたが、それにも関わらず第2回とほぼ変わらない数の応募があったことに満足しています。成果物の完成度も高く、1秒間に100枚を越える推論処理時間を達成したチームもありました。」と大渕氏はコメントしています。

今回はアイデア賞部門と処理速度部門でそれぞれ3チームずつ入賞する結果となりました。見事、激しい競争を勝ち抜いたのはこちらの6チームです。

アイデア賞部門

アイデア賞① Team:RSK

[018]Competition Report-4

アイデア賞② S.yamashita

[018]Competition Report-5

アイデア賞③ ymym

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処理速度部門

1位:経済産業省商務情報政策局長賞・エクストリームエッジ賞 Team:ABC1

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2位:エクストリームエッジ賞 Team:Yurara

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3位:エクストリームエッジ賞 Team:Vertical_Beach

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入賞者による解法プレゼンテーション

[018]Competition Report-10

本イベントでは受賞者6チームにより、コンペティションの解法や工夫した点についてプレゼンテーションが行われました。

各チームのプレゼンテーション資料は以下のリンクからご覧いただけます。

アイデア部門

処理速度部門

プレゼンテーション後には質疑応答の時間が設けられ、視聴者や主催者側から寄せられたさまざまな質問に受賞者が真剣に回答する様子が見られました。

総評・閉会のご挨拶

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最後は審査委員会を代表して3名の審査委員にコメントをいただきました。

[018]Competition Report-12

ステアリングコミッティ審査会

ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社 車載事業部

Distinguished Engineer

松本浩彰(まつもとひろあき)氏

「今回は応募者の多くがザイリンクス社のバイテスAIのフレームワークとDPUというAIアクセラレータを使われていたようですが、前回の実装コンテストとなる第2回よりも深い使いこなしをされていたのが印象的でした。 CPU側のスケジューリングやマルチスレッドなども、非常にきめ細かくシステムレベルでチューニングをされていたと思います。消費電力の制限がかなり厳しく、バランスをとるのが難しかったと思いますが、FPGAの限界性能に迫っているのではないでしょうか。 FPGAでセマンティックセグメンテーションを行うことに対して、実用化レベルに近い性能が得られているなと感じます。特にアイデア賞を受賞されたS.yamashitaさんは非常に時間をかけて、AIアクセラレータのハードウェア設計にチャレンジなさっていたのも印象的でした。 今後ハードウェア設計ができる人材を増やすこと、半導体産業・AI エッジアプリケーションを強化していくことが今回のコンテストの大きな目的ですので、これからもみなさんのチャレンジに大いに期待したいと思います。」

[018]Competition Report-13

ステアリングコミッティ委員長 東京大学/ティアフォー

加藤真平(かとうしんぺい)氏

「私はティアフォーという企業でAIアクセラレータの開発をしておりますので、その大変さを理解しているつもりです。だからこそ、今回は限られた時間・環境の中で、実用化レベルのロジックをみなさんが完成させていたことに驚いています。 今回の結果を見て、AIエッジコンテストは日本の将来に貢献できる取り組みになってきたと思いました。ありがたいことに連続で参加してくださっている方もいますので、今後もコンテストが継続できたら、連覇する方やその連覇を阻止する方なども出てきて、ますます盛り上がるのではないかと思います。 AI開発と比べると、半導体やロジックはまだ小さいコミュニティではあると思うのですが、必ず半導体が中心となる時代が来ると思います。日本から世界に発信できる技術を生み出すためにも、私もこのコンテストにできる限り貢献し続けたいと考えています。」

[018]Competition Report-14

アドバイザリーコミッティ委員長 カーネギーメロン大学 教授

金出武雄(かなでたけお)氏

「まずこの素晴らしい企画を実施いただいたことに対して、敬意と祝意を表したいと思います。私はアドバイザリーコミッティ委員長を引き受ける際に、『やるからにはコンテストの内容が現実的に意味のあるもので、多くの人が参加し、勝ちたいと思うようなコンテストであってほしい』とオーダーしました。そういう意味では、FPGAを使った自動車走行画像認識というテーマは現実的に価値があると思います。 これまで全4回の表彰式に参加させていただきましたが、確実に参加者のレベルが上がっているという実感があります。さらにこのコンテストが、この分野を学んで実行する契機になったという話を複数名の参加者からお聞きすることができたのも非常に嬉しかったです。 私は「Speed is everything(早くやらなければ意味がない)」と考えていますので、このコンテストによって処理速度・人材育成・コミュニティをよりスピーディーに確立できるようになることを期待したいと思います。」

まとめ

みなさんの挨拶でも言及があったように、AI学習及びFPGA実装の両方が必要となる難易度の高いテーマに対して実用化レベルの成果物が得られた今回のコンテスト。 日本のデジタルトランスフォーメーション推進の肝となる「半導体の発展」を担う人材が、このコンテストから生まれる日もそう遠くないと感じさせる表彰式だったと思います。 なお、第1回~4回のAIエッジコンテストの概要や実績データについては以下のリンクからご確認いただけます。

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