winner's_interview_オフロード画像のセグメンテーションチャレンジ1st_MPRGチーム

オフロードでは、公道での自動運転とは異なり、詳細な三次元地図や路車間通信などのインフラを利用することができない。そのためオフロードでの自律走行の実現には、周辺環境について、走行できる領域や障害物を高精度かつ高速に認識することが重要となる。 そこで、オフロード環境などの実走行で得られた画像を領域分割するアルゴリズムを作成し、認識精度と推論速度を競うコンテストが開催されることとなった。 本コンペティションの認識精度部門で、栄えある1位に輝いたMPRGチーム。その中心メンバーであるmasaki_s氏とSeo氏のお二人に、本コンペティションに参加を決めた経緯や、取り組みにおける工夫、参加することで得られた学びなどについて話を伺った。


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コンペを活用すれば、自分の引き出しを増やせると思った。

masaki_s:実は、最初は私一人でこのコンペに参加しました。セマンティックセグメンテーションは普段から研究で使っていたので、それを応用できるのではと考えたのが参加のきっかけでした。学部時代は道路にある信号機の自動認識などもやっていたので、自分の守備範囲と近いテーマだと感じました。 Seo:私は、masaki_sさんに誘われる形で途中からコンペに参加しました。セマンティックセグメンテーションは専門ではなかったのですが、それが逆に面白そうだと思ったからです。博士課程への進学ではなく就職の道を選んだのも、一つのことを狭く深く学ぶより、様々な手法を取り入れながら成果にコミットしたいとの想いからです。自分の引き出しを増やす意味でも、参加すると得られるものがありそうだと思いました。 masaki_s:私も、知識やスキルの幅が広がるのではないかと期待を持っていました。自分の専門領域でもある分、「普通ならこうアプローチする」との先入観、固定観念を取り払って、多様な角度からアプローチする姿勢を身につけるいい機会になりそうだなとワクワクしながら参加しました。

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広い視野を持てば、トライアンドエラーの質と量は上がっていく。

masaki_s:実際に取り組んでみると、これがなかなか難しくて。普通に学習しているだけでは精度がなかなか上がらない。それなのに、リーダーボード上では他の方々がどんどんスコアを伸ばしている。自分一人だけではどうにもならないと感じ、Seoさんをはじめとした研究室の先輩にお声がけして、手伝ってもらうことにしました。 Seo:私がはじめに思ったのは、試行回数が足りないということ。スコア上位の方々を見ると、一日に何度も投稿していたのです。いい結果が出なくてもいいから、とにかくトライアンドエラーしていこうと。そのトライをするためのアイデア出しを手伝うところからはじめました。 masaki_s:アイデア出しの視野が広がったのが、一番ありがたかったですね。どうしてもセマンティックセグメンテーションの枠内で考えてしまっていたのですが、このコンペは広く考えればディープラーニングのコンペでもある。そうした広い視点から、「こういう学習させてみたらどうかな?」とアドバイスをたくさんいただけたので、結果的に様々なアプローチを試すことができ、それが結果にも繋がったと感じています。

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使えないデータだから、で諦めなかった。

Seo:もう一つ効果的だったかなと思うのが、ラベリングされていない画像データの活用です。カテゴリ毎のラベル付けがなされていないので、そのままでは当然学習には使用できません。しかし、せっかくのデータなのでどうにかして活用できないかと考えました。 masaki_s:そこで先輩と一緒になって考え出したのが、ラベリング済みのデータを用いて学習させたモデルで、擬似的にラベリングする方法です。これなら、ラベルのない画像も活用できて、精度向上に寄与するはずだと思ったのです。 Seo:ただ、自分たちでラベリングしたものなので精度は100%ではありません。そこで、これらの画像データは、オブジェクトクラスの少ないデータと合わせて、あくまで事前学習用とすることで、精度への悪影響を最低限に抑えるようにしました。他の入賞者の方の解法を拝見しても、このデータを活用されている方はあまりいなかったので、ここは自分たちならではの工夫点と言えるかもしれません。

1位は獲れたものの、反省点や学びの多いコンペだった。

masaki_s:こうした工夫が功を奏して、認識精度部門で1位を獲ることができました。ただ、他の方の解法を見ているうちに反省点もどんどん出てきて。特に、3位に入賞された方が私たちと全く違うモデルを採用していた点や、損失関数にまで細かい工夫を凝らしていた点には刺激を受けました。 Seo:私も学ぶ部分がとても多かったです。モデルや、データの処理をどうするかの部分ばかりに目を向けがちでしたが、画像のデータセットそのものに着目している方もいらっしゃいました。クラスタリングをしながらデータ傾向を見つけ出して、適した処理方法を考えたりされていて、まだまだ工夫できる点は沢山あるなと思わされました。 masaki_s:Seoさんはもう就職されていますが、私はまだ学生なので時間はありますし、今回得た学びを活かしながら違うコンペにも参加してみたいと思っています。今回の参加でコンペが研究にも活かせることがわかりましたし、やはり成果を求めて競いながら開発を進めたり、他の方の解法を見たりすることはすごく勉強になりますから。

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今後の目標

masaki_s:こうしたコンペにも積極的に参加しながら知識を磨いて、ディープラーニングの知見を活かした仕事に就きたいです。専門領域であるセマンティックセグメンテーションが使える環境だと最高ですね。 Seo:感度を高く保ち、常に最新の情報をキャッチアップし続けられる人でありたいです。特に、社会人になったため、意識しないと本業関連の知識や情報にどんどん偏っていってしまう。フラットに広く情報や知識をキャッチアップするためにも、今後もコンペを活用していきたいと思っています。 <防衛装備庁先進技術推進センター主催「オフロード画像のセグメンテーションチャレンジ」コンペティションの入賞者レポートはこちら>

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