機械学習やAIスキルの習得には高度な知識が求められる。コンピュータサイエンスを専門的に学んできた人や、業務でAIを扱う人にしか習得できないというイメージを持つ人も多いのではないだろうか。たしかに、数学や統計学、プログラミング等幅広い専門知識が求められることは事実だ。しかし、それらを専門的に学んできた人にしか習得できないものでは、決してない。それを体現しているのが、今回お話を伺った白木原雅史さんだ。 理系ではあるものの、AIや機械学習と関わりの少ない学生生活を送り、入社後もAIとは縁のない部署へ配属。業務においても、QC7つ道具を用いたり、データを活用する機会は多くあるものの、AIを使うことは皆無。しかし、今では自らAIコンペティションに参加してメダルを獲得したり、仕事においてもAIを用いた業務改善を提案するまでになっている。そのきっかけは、SIGNATEのeラーニング『SIGNATE Quest』を活用した社内研修「アソシエイトデータサイエンティスト育成研修」への参加だったという(詳細は「学びを現場で活かす。徹底的にこだわった社内研修の中身とは 株式会社ブリヂストン【SIGNATE Quest】導入事例」を参照)。果たして社内研修に参加しただけで、なぜそこまで学習意欲が高まっていったのか。その意欲を成長へと結びつけられた理由は何か。率直な声を聞かせていただいた。
データを扱う仕事である以上、AIのスキルは役立つに違いない。
AI学習のきっかけは、社内研修への参加。そう語る白木原さんは、以前からAIへの興味を持っていたようだ。 「今や、AIやDXなどの言葉は新聞やニュースでも毎日見かけます。これだけ世間で叫ばれているということは、きっと役に立つものだとは思っていました。私の業務もAIこそ扱わないものの、データで語る必要性が高い業務ではあります。エクセルを用いたデータ分析やデータの可視化は日常茶飯事だったので、機械学習を使えばさらに業務効率化でき、ビジネスを広げることができるのではないかとの期待もありました。」 徐々に興味は強くなり、次第に関連書籍やブログを読むようになったものの、あくまで初学者。スムーズに独学でスキル習得とはいかず、専門用語の理解や全体像の把握に悪戦苦闘の日々。そこにタイミング良く社内研修の公募がかかり、即座に応募を決めたのだという。 「実は、私が『SIGNATE Quest』を活用した社内研修の第一期生。ちょうど独学の厳しさに直面していたところにデータサイエンス研修が立ち上がったので、これは応募するしかないと即決しました。ただ、参加する上で不安もありました。研修初日で『皆さんにはPythonを習得していただきます』と言われたのです。全くの初学者の私が、ノーコードツールを活用するのではなく、1からプログラミングも習得しなければいけない。不安はありながらも、覚えなければ修了できないならやるしかない、と逆に覚悟が決まった部分もありました。」

課題毎にどんなスキルが身につくかわかるから、意欲も自然に高まった。
一抹の不安も覚えながらも、覚悟を決めて研修に臨んだ白木原さん。しかし、そんな不安とは裏腹に、学習を進めていくうちに気付けば『SIGNATE Quest』を使った研修にのめり込んでいったという。 「まず『SIGNATE Quest』に取り組む中で感じたのは、これをやり切ればスキルが身につくだろうという確かな手応えでした。これまで読んできた初学者向けの関連書籍では、四則演算や『Hello, world!』のような文字列を表示させる簡単なワークから始まりました。ただ、この作業がAIスキルの習得にどうつながるのかが見えていなかった。一方で、研修で使用していた『SIGNATE Quest』は、単元ごとにどういう予測モデルができるかが明らかなので、ライブラリの読み込みなどの一つ一つの簡単なワークにも意味があり、それらをつなげていくことで最終的な予測モデルが完成することを実感できる。それが新鮮でしたし、とても楽しかったですね。」 簡単な小さいワークであってもAIのスキル習得への道が可視化されている。そこにモチベーションを見出すことで、時に睡眠を削ってでも作業に勤しむほどに熱中していった。そこには、明確なゴールへのステップだけでなく、他の要因もあったという。 「『SIGNATE Quest』で設定されている課題は、要点だけをタイプして動かすものだったり、ゼロベースから実装を行うものなど、ステップバイステップで学習を進めていけるところが、初学者の私にとってありがたかったです。あとは、至る所に競争心に火を灯すような工夫がされていて、負けず嫌いの私としては燃えました。例えば、一つの単元が終わる毎に課せられるチャレンジミッション。これが、絶妙な難易度で設定されていました。簡単には合格ラインに届かないので、何度も教材を復習しながら『絶対に合格してやる』と息巻いてチャレンジしたり。合格ラインに届くまで、何度もチャレンジできるので、自分の納得がいくまで学習することができて良かったです。他の参加者の進捗が出るアラートもあり、いい励みと刺激になっていました。」

研修や自習で身につけた知識を、現場で活用できるか試せるのがコンペティション。
『SIGNATE Quest』の内容が自身に合っていたこともあり、高い熱量を維持したまま研修を完走。そして、研修終了後もモチベーションが下がることはなかった。そんな白木原さんが次に向かった先は、コンペティションへの参加だった。 「研修を通じて気付いたのは、書籍やブログを読むよりも、実際に手を動かして実装する経験が大事だということ。実践の場を探す中で、コンペティションが最適なのではと思い当たりました。試しにSIGNATEさんの練習用コンペティションに参加してみたところ、手応えがあったので、本格的にコンペティションに参加するようになっていきました。」 初めて参加した「医学論文の自動仕分けチャレンジ」コンペティションで、いきなり銅メダルを獲得。成果だけでなく、コンペティションに参加する意義を知ることができたのも、大きな収穫だったという。 「実践的なスキルが身に付くことはもちろんのこと、自分の知識レベルを確認する場としても有効だと感じました。研修などで身につけた知識や技術が、本当に自分のものになっているのか。現場で使える形にアジャストできているのか。そうしたことを確かめるためにも、今後もコンペティションには継続的に参加していきたいと思っています。」

専門知識とAIを掛け合わせることで、大きな可能性が生まれるはず。
全くの初学者から、書籍で周辺知識や予備情報を学び、研修でPythonやAIの基礎知識を習得。そしてコンペティションで実践的なスキルへと昇華させ、メダルも獲得。順風満帆に成長を遂げてきた白木原さんが、今後目指すものとは一体何なのか。 「やはり、せっかくある程度スキルを習得できたので、本業に活かしたいです。すでに始めているのですが、想像以上に難しい。現場で扱うデータは、コンペティションで用意されているデータのように綺麗に整備されていません。どのデータをどこからどうピックアップして、どう整理してあげるのか。基礎的な部分に立ち返りつつ、試行錯誤しているところです。」 なかなか思うようにはいかない。そう語る白木原さんだが、光が見えているのも確かだ。会社全体でもDX推進の機運は高まっており、AI活用には協力的。研修の最後には、社内にある業務課題をAI活用で解決できるか発表する機会が設けられていた。そして、社内に知見を共有する中で、新たな目標も生まれたという。 「自分自身がスキルを磨いていくこともそうですが、社内にもAIの知見を広めていきたいと思うようになりました。弊社には、専門分野の知識や技術はトップクラスのスペシャリストが数多くいます。そうした知見とAIが掛け合わさることで、大きな可能性が生まれるはず。だから、学んだことを自分の中だけに留めておくのではなく、広く発信していけたらとも思っています。」 自らの成長から、周囲や会社の成長へ。目標や視座も高まり続けている白木原さん。簡単な道のりではないかもしれないが、高い熱量を保ちながら、歩みを止めることなく前に進み続けるに違いない。そんな白木原さんが、会社を大きく飛躍させる日も、そう遠くないのかもしれない。

これからAI学習を始める方へのメッセージ
やはり、まずは手を動かしてみる。これが何よりも大事だと思います。書籍を読んだり、動画を見たりすることでも、ある程度の知識は身につくかもしれません。しかし、できるつもりになっただけというケースも多いです。実際に手を動かすことで失敗し、挫折する。そこにこそ価値があるのではないでしょうか。何ができないのかを知ることで、学ぶべきことも見えてきますし、やる気も湧いてくる。そんな好循環を回しながら、学習を進めていってほしいと思います。 【関連記事】 学びを現場で活かす。徹底的にこだわった社内研修の中身とは 株式会社ブリヂストン【SIGNATE Quest】導入事例 <法人向けSIGNATE Cloudについて詳しく知りたい方はこちら> ※2022年4月1日に旧名「SIGNATE Quest」から「SIGNATE Cloud」にサービス名を変更しました。