RoleModels_とにかく実践。手を動かして、必要な知識を最短で習得_heegle

ITコンサルティングという仕事は、側から見ればAIと近い領域にある仕事に見えるかもしれない。しかし、その業務内容は千差万別であり、AIはもとより、プログラミングの深い知見はそこまで求められない場合も少なくない。 今回、お話を伺ったheegleさんもそんなITコンサルタントの一人。業務効率化を目的にコードを書いたことはあるものの、決してプログラマーというわけではない。AIを業務で使う機会もほぼ皆無だという。しかしそれでも、独学でAI知識を習得することを決意。着実に学習を進め、2020年に開催されたSIGNATE主催「JR東日本 列車運行予測コンペティション」では、列車遅延予測を行う部門で7位入賞。さらに2021年に開催された株式会社日本取引所グループ主催「J-Quants データ分析コンペティション」では、株価予測を行う「ファンダメンタルズ分析チャレンジ」で見事9位入賞を果たした。また、同コンペティションで得た知見を記事にまとめ、Web記事賞も受賞。総参加1000名を超えるコンペティションにも関わらず、素晴らしい成績を残している。 一体なぜAIを学び始めたのか。そして、コンペティションで入賞するほどの知見とスキルをどのようにして身に付けたのか。今後の展望も含めて本音をお話しいただいた。

リモートワークで生まれた隙間時間を上手に活用。

heegleさんがAIを学び始めたのは2020年7月頃のこと。学習期間はわずか1年ほどに過ぎない。しかし、その3年ほど前から既にAIに興味は持っていたという。きっかけは、世間でAIに注目が集まり始めたことだった。 「AIを使えるようになりたいというより、理屈や仕組みを理解したいという思いが入り口でした。これだけ社会で話題になっている以上、いずれは業務でも知識を求められることがあるかもしれない。それなら、理屈だけでも知っておけば役に立つのではないかと思ったんです。」 新しい技術への興味もあり、当時は書籍を買ってきて目を通していた。しかし仕事が忙しく、まとまった時間を取ることが難しい。もっと本腰を入れて学習しなければとの想いを抱えつつも、本を眺めるだけの日々が続いた。転機となったのはコロナ禍への対応を契機とした、業務のリモートワーク化だった。 「新型コロナの流行を受け、勤務先もリモートワークへと移行しました。それに伴って、時間の融通が利きやすくなったのです。『これは隙間時間を活用すればしっかり学習できるかもしれないぞ』と思い、本格的に学習を始めました。」

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煮ると茹でるの違いを調べるより、まずは煮物を作ってみようと。

きちんと時間を確保して本格的にAIを学ぶ。そう決めたheegleさんがまず目指したのは、資格取得。受検料が割引されていたことにも背中を押され、日本ディープラーニング協会が開催している「G検定」の受検を決意。たった1ヶ月ほどの学習で見事合格を果たした。 「学習の実態は書籍の暗記が中心でしたので、資格は取得できたものの、スキルアップした感覚は正直ありませんでした。そのため、今度はAI開発の現場に必要とされるリアルな知識を身に付けようと考えるようになりました。」 活きた知識をどうやって身に付けるか。初めは基礎から学び直そうと考えていたものの、いきなり実践の中で学習を進めることに。そこにはheegleさんならではの考えがあった。 「もちろん基礎も大事ですが、実践で学んでいく方が絶対に習得が早い。料理と同じだと思います。煮ると茹でるの違いや、それぞれに適した食材を一つひとつ学ぶより、まずは煮物を作ってみようと。失敗しても、そこに学びがある。そこから基礎に立ち戻ることで『だから失敗したのか』と理解が深まることもありますしね。」 実際に手を動かして、必要な知識を最短で習得する。そんな実践の場としてheegleさんが目をつけたのがコンペティションだった。

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悩まないようにするのではなく、悩む時間を短くする。

最初に参加したKaggleの四目ならべの無期限コンペティションではいきなり、最高で世界59位を記録。その後に参加した、雲の動きを予測するコンペティションでも6位にランクイン。初めから好成績を収め続けたものの、その裏には多くの挫折があったという。 「毎日毎日悩んでいました。AI開発環境の知識すらないところからのスタートでしたから。ただ、悩む時間を短くすることだけは最初から意識していました。初心者だから、わからないのは仕方がない。それならせめて、すぐに調べてすぐに解決する。そのサイクルを早く回すことで、少しでも速く、多く学ぼうと決めたのです。」 コンペティションという実践の場で、壁にぶつかってはすぐに乗り越える。その繰り返しの中で着実に成長を続けていったheegleさん。学習の手応えを感じながらも、徐々に成長速度に物足りなさを感じるようになっていったという。 「完全な独学って非効率かもしれないと思うようになったのです。わからないことを調べるより、知っている人に聞いた方が速い。それが一番、悩む時間を短くできる。では、どこに行けば詳しい人達と知り合いになれるのかなと考えていた時に『AI Quest』の存在を知ったんです。」

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初心者ほど、共に学ぶ仲間の存在は重要。

経済産業省が提供するAI人材育成プログラム「AI Quest」。そこでheegleさんは大きな収穫を得たという。それは知識や経験ではなく、人脈だった。 「『AI Quest』の課題自体も面白く、学びがあるものでした。ただ、なにより有意義だったのは共に学び合う仲間を得られたこと。同じクラスの方から『もくもく会』というコミュニティに誘ってもらったのです。文字通りオンラインで繋がって、黙々と各々が作業する会なのですが、これがなかなか良くできていて。周りが作業していると思えばサボる気にもならないですし、わからないことがあればすぐに聞ける。メンバーそれぞれの得意分野も違うので、互いに教え合いながら成長できるのです。」 メンバー全員が、このコミュニティに大きな価値を感じていると語るheegleさん。その証拠に、「AI Quest」が終了した今もコミュニティは存続している。自習を支え合うだけでなく、共にコンペティションに参加し、フォーラムでの意見交換を通して上位入賞を目指すことも。コンペティション開催終了後には反省会を行い、得た知見も共有する。実に効率的な学習環境だ。 「なかなか気軽にリアルの場で集まるのが難しい今だからこそ、オンラインで学び合えるこうしたコミュニティは本当にありがたいですよね。特につまずきやすく、挫折しやすい初心者ほど、支え合って競い合える仲間の存在は大きいと思います。」 書籍やeラーニング、コンペティション。今やAIを学ぶ方法は多岐にわたり、それぞれに長所と短所がある。それらを上手く活用しながら、悩む時間をできる限り短くしていく。そして、共に学ぶ仲間を作る。それが、heegleさん流の学習法。わずか1年ほどで成果を出したこの考え方は初心者にも、そして既学者にもきっと役に立つはずだ。

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これからAI学習を始める方へのメッセージ

本当にAIを学ぶ必要があるのか。あるとしたら、どんな目的でどんな内容を学ぶべきなのか。そこにきちんと向き合って、しっかりと固めておくことが大事なのではないでしょうか。どんなことを学習するにしても、大事なのは継続すること。そのためには目的があった方がモチベーションも維持しやすい。目指す場所が決まっている方が、遠回りもしなくてすみますしね。 <株式会社日本取引所グループ主催「J-Quants データ分析コンペティション」ファンダメンタルズ分析チャレンジの入賞者レポートはこちら> <株式会社日本取引所グループ主催「J-Quants データ分析コンペティション」ファンダメンタルズ分析チャレンジでWeb記事賞を受賞したheegleさんの「機械学習による株価予想の十八手」記事はこちら> <法人向けSIGNATE Cloudについて詳しく知りたい方はこちら> ※2022年4月1日に旧名「SIGNATE Quest」から「SIGNATE Cloud」にサービス名を変更しました。

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