Features_日本を前進させるAI活用と、人材育成のあり方とは

少子高齢化が進む日本において、労働人口減少は避けて通ることのできない課題の一つ。産業を衰退させることなく、さらに発展させるためには業務の効率化が重要となってくる。そこで着目されるのが、AIをはじめとした最新テクノロジーとデータの活用だ。 機械学習や画像認識といったAI技術を活用し、従来は人間が担っていた業務を大幅に効率化・省力化し、新たな価値を創造する分野に注力する。もはや、これは日本が絶対的に実現しなくてはいけない未来ともいえるだろう。その未来へ向かう道に立ちはだかる最も大きな壁。それは、デジタル人材の育成に他ならない。 世界に遅れをとりつつある日本のデジタル人材育成。 その課題はどこにあるのか。それを乗り越える方法とは何か。 全国に先駆けた取り組みを続ける広島県の山田副知事と、AIプラットフォーマーとしてサービスを展開するSIGNATE齊藤社長にお話を伺った。


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若い世代をはじめとした、幅広い層にいかにアプローチしていくか。

アメリカやシンガポールといったデジタル先進国と比べて、日本はAI人材育成の面で遅れをとっている印象があるのですが、その原因はどこにあるのでしょうか?

山田:まず、若い世代へのAI/データ分析に関する教育環境が整っていなかった点があります。現在は日本でもSIGNATEさんのようなAIプラットフォーマーが提供するeラーニングも普及してきており、自らアクセスすれば学習できる環境は整ってきていると思います。 一方で、そこにアクセスできる人材はリテラシーの高い層に限られてしまう。例えば、学校でAIやデータ活用に関する科目を必修化するなど、若い世代から学習できる環境をもっと整えていかないといけないのではないでしょうか。実際に広島県では一部の大学でSIGNATEさんのeラーニング「SIGNATE Quest」の受講を必修科目化する取り組みを進めています。 齊藤:DX推進が各所で叫ばれているように、今は社会構造が大きく変わっていくタイミング。このパラダイムシフトに対応できる規模感でのデータ活用は、今いるデータサイエンティストやAIエンジニアが頑張ればどうにかなるようなものではありません。そうした意味でも、幅広い層への興味喚起、そして学習機会の提供を行っていくことが必須だと思います。 弊社がAI学習をオンライン展開している理由も、まさしく若い世代をはじめ幅広い方々にAI技術を習得していただきたいからです。AI/データ分析を身近に感じて、国内全体のAIへの意識を高め裾野を広げていくことはとても重要です。

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デジタル人材は、データサイエンティストやエンジニアだけではない。

育成対象を広げていけるかがカギ、とのお話でしたが、教育すべき内容についてはいかがでしょうか?

山田:データ活用そのものを俯瞰的に捉えた教育が必要なのではないでしょうか。一口にデジタル人材といっても、そこには様々な人材像が含まれていると思います。 専門的にAI研究を行うデータサイエンティストにばかり焦点が当たってしまいがちですが、開発や実装を行うエンジニアも、またデータサイエンティストを育成する人材も、当然必要です。さらにはAIやデジタル活用を組み込みながら、課題解決の全体像を描くプランナーのような方も含まれるはずです。 齊藤:副知事がお話しいただいたポイントは、先ほどの裾野を広げることにも繋がっていると感じます。デジタル人材=データサイエンティストやエンジニア。そうしたイメージがあるせいで、AIやデータ活用をどこか他人事のように感じてしまっているのではないでしょうか。 実際は決してそんなことはなく、どのような仕事であっても、AIやデータ活用の知見が求められるようになる。そうした社会認識を広げていくことも重要と考えます。 山田:たしかに、その2つは合わせて考えることが大切かもしれませんね。あとは、どのレベルまで教育を行うかという点も重要なポイントです。日本国民全員が、最先端テクノロジーを自由に活用できるレベルになる必要はないと思いますし、そもそも現実的ではありません。 企業や地域にどのような課題があるのか。今後どのような課題が出てきそうなのか。そうしたニーズを見極めながら、相応しい人材を育成できるような教育体制を組んでいくことが、有効な人材育成につながっていくと考えています。 齊藤:レベルに合わせた教育の観点でいえば、実践を通した教育も重要ですよね。 AI、デジタル人材の育成は、これまでの教育方法と異なり、具体的なテーマに向き合いながら経験的にやらないと、なかなかスキルが自分のものにならないということが分かってきています。これが、人材育成を難しくしている理由の一つ。 技術的なものだけであれば、教材によって一定の知識を身につけることはできます。しかし、実際に課題解決の技術にまで昇華させるには、実践の場が必要です。具体的な産業課題に向き合いながら経験を積める環境、つまり実践の場を、いかに用意できるかがカギになってくると思います。

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AIやDXへ踏み出す不安を軽減させるのが地方自治体の役割。

お話しいただいたような人材育成を進める上で、地方自治体が担うべき役割とはどのようなものだと考えていらっしゃいますか?

山田:まずは先陣を切って市や町としての取り組みをインターフェース含めてデジタル化していくことが求められているのではないでしょうか。特に、新型コロナの流行を機にデジタル化のニーズは高まっていると感じます。 一方で、それを推進していく上で行政内部でもデジタル人材が足りていない実情があります。そこで、まずは自分たちがデジタル人材の採用、育成をして確保していく。そのうえで、自治体として提供するサービスを順次デジタル化し、住民のみなさんの利便性を高めるとともに、デジタル化への啓蒙を行う。そうした役割を果たしていきたいと考えています。 齊藤:私がこの仕事をしていて、AIやDXに踏み込めない企業や組織には共通点があると感じています。それは、心理的な不安です。コストが高くついてしまうのではないか、ベンダーは信用できるのか、精度は担保できるのか、本当に成果に結びつくのか。こうした不安や懸念を抱えているせいで初めの一歩が踏み出せない企業がほとんどだと思います。 そこで、地方自治体の皆さんには是非、不安を払拭する部分で力を発揮していただきたいと思っています。例えば、成功したロールモデルの概要をまとめてリリースしたり。そうした、地域の企業や組織が一歩踏み出すきっかけになるような取り組みを期待したいです。 山田:ありがとうございます。ぜひ参考にさせていただきます。

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地域の課題を起点にするマーケットインの視点でさらなる進化を。

最後に、今後広島県としてどのような動きを推進していこうと考えているかお聞かせください。

山田:先ほど申し上げた県庁自身のデジタル化を第一優先で実現していきたいと考えています。そのための取り組みはすでに始まっており、広島県として新たに「情報職」の採用を開始しました。採用と育成の両輪を回しながら、AI人材活用の手本となれるような存在を目指していきます。 また、並行して県内のDX推進も行っています。広島県DX推進本部という組織も立ち上げ、私自身が本部長として推進の最前線に立っています。その活動の一つとして、広島県DX推進コミュニティを創設し、デジタル化のイロハがわからない中小企業向けの勉強会や共有会も実施しています。これまでの経験から、技術があっても普及しないという課題があることはわかっているので、県内に広く普及させるような活動をしていきたいと考えています。 齊藤:DX推進コミュニティのお話もそうですが、マーケットインの考え方で取り組みを進めていらっしゃるのが素晴らしいなと感じました。自分たちに何ができるかではなく、住民や県内の企業が何に困っているのかが起点になっている。だから、悩みや困りごとを共有できるコミュニティの立ち上げから始まっている。特に日本は技術立国という思い込みからプロダクトアウトになりがちなので、この点は他の自治体や企業にとっても参考になるポイントだと思います。 山田:そこはとても大事にしています。データを活用するのは、あくまで地域の課題を解決するため。そこに紐付かなければ意味がないので、どこにどんなニーズがあって、それに応えるにはどうすればいいのかを優先順位として必ず考えるようにしています。その結果、地域の課題を起点にしたプロジェクトが実際に生まれていて、今もドローン等を活用したスマート農業やITを活用した牡蠣の養殖プロジェクトが動いています。 今後も地域の課題を第一に、人材育成、人材活用を有機的につなげたサイクルを回しながらAI活用といえば広島と言われるようさらに活動を推進していきたいと思います。 齊藤:我々もそこに貢献できるよう、引き続き協力させていただければと思います。素敵なお話、どうもありがとうございました。 山田:こちらこそありがとうございました。 ※ひろしまサンドボックス推進協議会事務局主催のコンペティション詳細ページ  <ひろしまQuest2020#stayhome:プロ野球データを用いた配球予測>  <ひろしまQuest2020:画像データを使ったレモンの外観分類(ステージ1)>  <ひろしまQuest2020:画像データを使ったレモンの外観分類(ステージ2)>

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