2022年6月1日〜2022年7月24日にかけて、テクノプロ・デザイン社主催「飛行機の航空経路の推定チャレンジ〜CARATS航空経路データを用いたウェイポイントの推定~」コンペティションが行われました。その後12月23日に、コンペティション「一般の部」入賞の上位3チームに登壇いただき、テクノプロ・デザイン社・SIGNATE共催データサイエンティストOnLine交流セミナー「データサイエンスを考える」対談イベントを実施しました。なぜデータサイエンティストを目指したのか、データサイエンティストとして活躍する条件など、実際にデータサイエンティスト職に就いている方が思う、職業としてのデータサイエンティストについて語り合いました。 本記事では、イベントレポートとして一部を抜粋してお届けいたします。 まず冒頭で、テクノプロ・デザイン社、SIGNATEによる各社の会社説明が行われました。 続いて、テクノプロ・デザイン社の採用本部 採用マーケティング室 山口 公祐氏による司会進行のもと、本題の特別対談へと入りました。テクノプロ・デザイン社 中井 克典氏、株式会社野村総合研究所 Kazuhiro.O氏、NRIデジタル株式会社 チームTSSから佐々木 理人氏、瀬水 太朗氏、滝口 広樹氏、株式会社三菱総合研究所 MaruMaru氏が登壇しました。


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モデレーターのテクノプロ・デザイン社 中井氏よりコンペティションについての概要説明、登壇者の自己紹介に続いて、テーマ毎のパネルディスカッションが行われました。

「データサイエンティストを目指したきっかけ」

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山口氏「データサイエンティストを目指したきっかけからお聞きできればと思います。始めにMaruMaruさん、先ほど情報系の学部を卒業されたということなのですが、きっかけは何かありましたでしょうか?」 MaruMaru氏「一番のきっかけは、自分の強みとなるものが欲しかったというのが大きいですね。大学生のうちに自分の強みを一つ作ろうと思っていたときにデータサイエンスと出会い、学んだのが目指したきっかけです。」 佐々木氏「私は大学3. 4年生のときに、AIベンチャー企業でアルバイトをしておりまして、そこで大企業向けにデータサイエンスを軸にシステムの受託開発やモデルの研究開発を担当していました。仕事が面白くて、社会人になっても同じようなことをしたいなと思い、新卒で今の会社に入社しました。」 Kazuhiro.O氏「私は元々文系学部出身なのですが、仕事でデータ分析プロジェクトにエンジニアとして入ったときに、先輩のデータサイエンティストの方がデータを使って、私には全く分からないような裏に隠れた事実を見つけていく過程が非常に面白くて。私は推理小説が好きなのですが、謎解き部分を見ているような感じがして、興味を持って勉強を始めたというのがきっかけになります。」 山口氏「ありがとうございます。Kazuhiro.Oさんは、業務の中で出会ってはまっていかれたのですね。皆様からデータサイエンティストを目指すきっかけをお伺いしました。次は、中井さんにバトンタッチしまして、データサイエンティスト目線で他の方の業務内容を聞いてもらいたいなと思います。」

「具体的にはどんな業務?一日の仕事の流れ」

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中井氏「データサイエンティストの働き方は、色々なバリエーションがあると思います。その辺りもキーワードにしながらお話を聞きたいなと思います。まずは、 Kazuhiro.Oさん教えていただけますでしょうか。」 Kazuhiro.O氏「私の場合は、基本的に一人で最初から最後までやることが多いです。お客様から課題をヒアリングし、データ集め、分析、必要に応じてモデルを作るというのを、一人でやっています。うまく進まない日には、一日中データ分析をしていることもあります。」 中井氏「お一人でされているということで、一人だと辛いなと思う時はないですか?」 Kazuhiro.O氏「行き詰まってしまうことや、自分の思い込みにハマってしまうことが多くて、そうなって抜け出せないときが一人で仕事をする辛い点かなと思います。」 中井氏「そうですよね。次に、瀬水さんはいかがですか?」 瀬水氏「私は、小売業界における需要予測の担当をしております。だいたい一日の流れは、朝9時にミーティングを行い、昨日までやったことや本日行う分析について話し合います。その後は個別で分析を行う、必要に応じてお客様との定例に向けた発表資料などを作成するなどをしています。分析で行き詰った場合は、チームメンバーやプロジェクトリーダーとすぐ話し合って解決し、より精度の高いモデルを作っていくというようなことをやっております。」 MaruMaru氏「私の場合もチームでやっています。複数案件を同時に進めていくので、一日の中に担当案件の打ち合わせが一回ずつくらい入ってきます。そこで方針を決めて、タスクを振り分けたら、そのタスクを行っていく感じです。タスクの内容としては、分析や資料作成、お客様への連絡などです。一日の流れとしては、朝9時くらいに出社し、その後会議が細切れで入り、その間に作業をするという感じです。」 中井氏「ありがとうございます。色々なバリエーションがありますよね。私はどちらかというと、分析というよりはお客様と会話をしている、打合せをしていることが多いですね。 次の質問ですが、皆さんにとってデータサイエンスの仕事のやりがい、楽しいと思うことをお聞きしたいと思います。」

「仕事のやりがい、楽しさ」

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滝口氏「我々の部署はいわゆるお客様に向き合い、対話しながら分析やモデル開発をする場面もあれば、一方でお客様には社内の別担当が向き合い、我々はものづくりに専念するという二つのパターンがあります。お客様と接する場合は、やはり直接お客様の感想を聞くことができますし、課題も直接聞けるので、そのコミュニケーションのやりがいや楽しさ、難しさも含めて教わることが多いと感じます。一方ものづくりに専念する場合は、精度を高めたり、深い分析をしたりしたからこそ分かったことがあるなど、技術的なアウトプットが出た時かなと思います。」 Kazuhiro.O氏「私の場合は、最初の質問のきっかけでお話した内容とも重なりますが、じっくりデータを見ているときに、見えなかった事実が見つかる、その瞬間が推理小説の犯人が分かった的な一番やりがいを感じるところですね。今回のコンペ中も、これがいけるのではないかみたいなところが、やっぱり楽しかったです。」 MaruMaru氏「私も前者のお客様に刺さるときが一番楽しいなと思いますね。データ分析をしていて、ちゃんとファクトがあって主張できるものが見つかると嬉しくなります。資料にまとめ、お客様に会ってご説明する時は、ちょっとワクワクしながらお客様先に向かったりします。そういう時に楽しいなと思います。」 中井氏「ありがとうございます。私もお客様と対話しながら進めるやり方をしていることが多いので、うまく課題を聞き出せたときや、「ああ、なるほど」というお答えをいただいたときに、やりがいを感じますね。我々がこういう色々な楽しさを感じながら仕事をしているというのが、視聴者の皆さんにも伝わればいいなと思います。」

「業務での成功体験や失敗談について」

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中井氏「では続いて、業務での成功体験や失敗談についてお聞きしたいと思います。」 瀬水氏「私の成功体験は、モデルの精度を上げるために、自分の仮説で特徴量やデータを加え、想定通りのときや想定以上に予測精度が上がったときです。逆に失敗談は、精度が上がらなかった時ですね。想定通りにいかなかったときや、思った通りの結果が出ない、出せないで詰まるみたいなときは、なかなかしんどいなと思う時もあります。」 MaruMaru氏「私の失敗談でいうと、予測ロジックを作る部分で最終的に相手に理解してもらえるか、というところですね。精度がすごく良いのができても、それを自分の言葉で説明して相手も納得して、ちゃんと理解してもらわないと意味がないと思っています。私たちはデータをずっと触っていますし、いつも見ているので、これぐらいでわかるかなという説明をしてしまうと、お客様からはどういうことですか?となることが多いです。なので、理解しやすい伝え方みたいなところが重要かなと思っています。」 Kazuhiro.O氏「今お話していただいた通り、私もお客様に伝わらなかったというのが一番の失敗だと思っています。データをどう見るかは、結構人によると思うのですが、そこでお客様に伝わらない、思い込みが入ってしまった失敗はよくあります。」 中井氏「でも、一人でやっているとなかなかわからないですよね。多角的な視点や少し引いた視点が自分たちでも作れないとなかなか難しい。あとは、お客様目線でもう一度考え直してみるとか、そういった工夫ができるといいですよね。データサイエンスの道にこれから入られる方がいれば、是非参考にしていただければなと思います。」

「データサイエンティストのミライについて」

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山口氏「ありがとうございます。では次の質問に移らせていただきます。データサイエンティストの未来についてということで、今大学ではデータサイエンス学部が乱立していたり、あと2、3年すると新卒のデータサイエンティストが溢れるのではないかという示唆も出ていたりしますが、今後どのようになっていくか皆さんのご意見をお伺いできますでしょうか。」 Kazuhiro.O氏「完全に予想ですが、少なくとも5年後はまだまだ人とデータサイエンスをつなげる役割がデータサイエンティストに求められると思っています。10年後になると、もうデータサイエンスを特に意識しなくてもOKな、享受できる世界になってきているのではないかと思います。とはいえ、そういう世界の中で新しい役割がきっとあると思っているので、その世界に合わせて模索していこうと思っております。」 佐々木氏「ちょうど私が就職活動をしていた3年前ぐらいから、データサイエンティスト職が出てきた記憶があり、今は国内でどんどん増えている人気の職種になりました。ビジネスにおいてもAIに置き換えて無駄をなくしていくにあたって、やれることはまだたくさんあると思っています。そういった意味で最適な社会の創造に寄与していくために、まだやることがある、未来が明るい職種なんじゃないかなと希望を持っています。」 中井氏「私がこの世界に入った頃だとモデル構築ができる人や、コードをかける人がすごいという時代でしたが、最近はコードも共有されていて、これとこれを繋げれば終わりという世界が近づいてきている印象を持っています。ただ新しいビジネスを作る、もしくは今あるビジネスをさらに改善するところで頭を使う、考えるというところに関しては、まだAIでは厳しいです。条件を与えるのも難しいですし、背景を全てAIに教えるのは、まだまだ5年10年では絶対にできないだろうと思っています。そういったところに挑戦しようと意思を持っている方であれば データサイエンティストの未来は明るいと思っています。」 MaruMaru氏「先ほど人為的な要因と、技術進歩的な要因で仕事がなくなるという話が出ていたと思います。技術進歩的な話からすると、Wordやパワーポイントが出始めた時、我々の仕事はなくなると言われていたらしいのですが、実際そんなことはありませんでした。技術がどれだけ進歩しても、それを利用する人間が必要とされ続けるかなと思います。人為的な要因ですが、データサイエンティストが増えすぎる可能性については、確かにアメリカなどでは、データサイエンティストが減り、そこまで採用されないと聞きます。ただそれは、自社にデータサイエンティストを抱えているという背景があり、日本の場合、アウトソースする文化だと思いますので、今後も需要はあり続けると思っています。」

「あなたにとってデータサイエンティストとは?」

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山口氏「ありがとうございました。最後の質問に参りたいと思います。あなたにとってのデータサイエンティストとは何かというのを、皆様から一言ずついただければと思っております。」 中井氏「私にとってデータサイエンティストというのは、ビジネスを作っていく、新たな経済をドライブしていく人材だと考えています。」 Kazuhiro.O氏「データを使って、世界のあらゆる課題や問題、謎を解き明かしていくお仕事なんじゃないかなと思います。」 佐々木氏「私にとっては、世界を切り開いていく仕事だと思っています。」 瀬水氏「シンプルなのですが、データを使って人を喜ばせる仕事かなと思っています。」 滝口氏「自分たちの会社の成長につながり、お客様にとってはデータがニーズを掴むための一つのツール、それを扱えるデータサイエンティストは屋台骨だと思います。」 MaruMaru氏「私にとっては、費用はかかるけど効果のある武器かなと思っています。」

まとめ

対談中には視聴者の方からもたくさんの質問が寄せられ、記事で紹介した以外にも盛りだくさんなディスカッションが繰り広げられました。 データサイエンティストとしての働き方も、エンジニア要素が強い方から、コンサルタントとしてコンサルティング業務の一つでデータサイエンスを使っている方まで様々にいらっしゃいました。これからデータサイエンティストを志したいと思っている方や、すでにデータサイエンティストとして業務に携わっている方にとっても、データサイエンティストという職種を身近に感じることのできるイベントでした。 <【youtube】航空経路の推定チャレンジコンペティション-一般の部上位入賞発表-> <【youtube】テクノプロ・デザイン社 若手データサイエンティストがコンペに挑戦したドキュメンタリー>

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