大学ではマーケティングを専攻し、メーカーや広告業界を中心に就職先を探していた信國氏。そんな彼女が、なぜ鉄道会社である東急株式会社へ入社することになったのか。そして、同社でまさにこれから始まるデータ活用の最前線に身を置き、DX推進に向き合う率直な想いとは――。
広く暮らしを支える仕事がしたかった。
専攻していたマーケティングの知見とスキルを活かしたい。そんな想いがありつつも、鉄道会社である東急を就職先に選んだ信國氏。鉄道業界との出会いは、ゼミで行った産学連携プロジェクトだったという。 「プロジェクトの連携相手が鉄道会社でした。鉄道会社というと車掌さんや運転手さんをはじめとした専門職の仕事イメージを持っていましたが、一緒に研究をしているうちに、沿線の都市計画や小売を始め、鉄道だけでない街や社会全体を支える仕事なのだと知り、興味が湧いてきたんです。」 もともと、マーケティングを専攻した理由も、どんな人でも行う購買行動に関わることで、日常生活に根付いた形で多くの人に価値を提供したいとの想いから。それなら、メーカーや広告業界で特定の商品を扱うのではなく、鉄道会社で街や社会全体を支える仕事の方が、日常生活全般に関われて、より多くの人に貢献できるはず。特に、鉄道会社の中でも東急は事業領域が広く、その全てに均等に注力している印象を受けたという。 「鉄道、都市開発、生活サービス。どの事業に関わることになったとしても事業規模が大きいので、楽しく働けそうだったのが、入社の決め手になりましたね。」
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自分の出したデータで販売戦略が変わってしまう責任とやりがい。
入社後、希望通りのマーケティンググループに配属され、大学時代の学びを活かしながら勤務している。現在、信國氏が主に担当しているのは、グループ企業内の百貨店やネットスーパーの顧客データの分析だという。依頼主のニーズに応じてデータを抽出し、加工、分析を行ったうえで、BIツール※を活用してビジュアル化したレポートを作成している。 「私の出したデータをもとに売り場設計やキャンペーン施策の検討などが行われるため、影響力は大きい。その分、責任も感じますが、やりがいある仕事を任せてもらっているなと思います。」 そうは言っても、まだ2年目。一人で全ての業務を完璧にこなすのは難しいと信國氏は語る。 「一番難しいのが、依頼者であるグループ会社の要望をしっかりと整理すること。相手は、データ活用のプロではないので、ざっくりとした依頼が来ることが多いです。例えば、ロイヤルカスタマーの購買数が多い商品を調べてくれと依頼があった場合、まず『ロイヤルカスタマーとはどのようなお客様なのか』の定義から始めないといけないんです。」 来店回数で見るのか、単価で見るのか、それとも購買点数で評価するのか。それによってデータは大きく異なる。自分の思い込みではなく、丁寧に目的を聞き出し、最適な定義づけを行う。地味にも思えるこの難しい工程を徹底することで、データは初めて意味のあるものとなるのだ。 ※BI(Business Intelligence)ツール:データの抽出、加工、レポート作成するためのアプリケーションソフトウェア。
![[017]project-stories-2](https://images.ctfassets.net/7z4do5alg1qg/7bF6Ous0XvztgW2XKbVzcP/a61150eb0d393929a6682d5195af7bd4/-017-project-stories-2.png)
私の仕事はデータの分析ではなく、妥当性の高い仮説の構築。
信國氏の一番のこだわりは、グループ会社の目的を把握すること、言い換えれば、集計や分析を目的にせず依頼主の要望を叶えるところにゴールに置くことだという。 「ただの集計屋さんになりたくないんです。あくまで、集計や分析は手法にすぎませんから。」そう考えるようになったのは、1年目で担当したあるプロジェクトがきっかけだという。 「顧客データの整理と分析を任された私は、先輩の力を借りながらもなんとか結果の出力まで完遂しました。最終的なデータの精度にも自信があり、1年目ながらいい仕事ができたなと思いながらグループ会社に分析結果を報告しました。ところが、出てきた第一声が『つまり、どういうこと?』。その場で一気に焦りやら恥ずかしさやらが込み上げてきたのを、今でも覚えています。」 当然の反応だった。当時の信國氏が報告したのは、あくまで分析結果のみ。分析結果のデータだけを渡されても、読み解けなければそれはただの数字の羅列でしかないからだ。 「グループ会社が欲しいのは分析結果のデータそのものではなく、そのデータから考えられる改善策や仮説。そこまで頭が回っていなかったのです。それからは、集計や分析を回すだけでなく、そこからどんなことが読み取れるのか。どこを改善すべきで、どんな施策を打てば効果が見込めるのか。そうした、データから導き出した自分なりの意見を必ず添えるようにしています。」
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先回りしたデータ活用でグループ会社の期待を超えるマーケターに。
データを出すのではなく、そのデータから何が読み取れ、どんなことが言えるのか。そこをゴールにしてから、仕事のやりがいや楽しさは一層増していった。グループ会社の反応もよくなり、感謝されることも以前より増えた。 しかし、本人からすればまだまだ未熟だという。「上司の姿を見ていると、自分ももっと精進しないといけないなと日々思わされます。私はまだ、要望を受けた範囲でデータを分析して読み解いているだけ。上司の場合はその先回りをして、頼まれていないことまで提案していますから。」 自身の未熟さを痛感した出来事があった。グループ会社から、顧客データの更新作業を行うので当年度の顧客データを送ってほしい、と依頼を受けた際の上司の対応だ。 「情報の更新が目的だったので、依頼通り受け止めれば当該データを送信したら終わりです。ところが上司は、グループ会社の置かれた状況を鑑みたうえで、顧客の会員ランクのアップダウンのうち、特に売り上げにインパクトがあるのはどこかを分析して、送信時に添付していたのです。」 相手からも感謝され、売上向上に寄与できる価値あるデータを生み出した。全ては、上司の『相手を先回りする姿勢』から生み出されたもの。 「隠れたニーズまで読み取って、東急グループのあらゆるデータを活用しながら新しい価値を生み出せる。そんなマーケターになりたいですね。」 信國氏の目は、まだまだ上を見据えている。彼女が理想とするマーケターへと成長したとき、きっと東急グループのデータ活用も新たなフェーズへと到達しているはずだ。
今後の目標
今は、グループ内のリテールを中心としたデータ分析を担当していますが、もっと広い領域に携わりたいですね。就職理由でもある、幅広く街や社会に貢献できる仕事をするために、鉄道や交通も巻き込んだ分析を行い、大きな施策を提案するような仕事ができればと思っています。 ※東急株式会社のSIGNATE Campus掲載情報はこちら