世界からも高い評価を得る日本のものづくり。研ぎ澄まされた技術力を背景に、ジャパンクオリティのプロダクトを各方面で生み出し続けている。そんな日本のものづくりを支えているのが、アウトソーシングサービスだ。技術力や知見の観点から、完全な内製化が難しいプロジェクトにエンジニアを派遣し、クライアントのサポートを行う。表に立つことはあまりないため、注目を浴びることは少ないが、実は日本の技術革新に大きく貢献している。 株式会社テクノプロは、アウトソーシング業界をリーディングカンパニーとして率いる存在だ。彼らが業界全体の革新のためにも、アウトソーシングと並行して力を入れている領域がある。それが、ソリューション事業だ。クライアントの一員としてサポートするのではなく、エンジニアリングのスペシャリスト集団の知見を結集して顧客のニーズに応えていく。先端技術センターに勤務する中井克典さんが担うミッションも、このソリューション事業だ。 自社技術の粋を結集し挑む重要な仕事を担う中井さんは、実は数年前まで研究職に就いていた。博士課程を修了し、2校の博士研究員を経て特任助教というアカデミアの道を邁進してきた中井さんはなぜ、民間企業で働くことを決めたのか。そして、テクノプロという会社やデータサイエンティストという職種を選んだ理由は何だったのか。その経緯や仕事への想いを本音で語っていただいた。
自分のやりたい仕事から、誰かのためになる仕事へ。
「その研究は一体いつ、誰の役に立つの?」 研究職に就いていたとき、何度も聞いた言葉です。その度に、回答に窮している自分がいました。自分の研究が実用的な領域に応用されるのは10年、ひょっとすると100年先かもしれない。この自覚があったからこそ、疑問をぶつけられるたび、モヤモヤする想いを抱えていたんです。研究者の道を選んだのは、誰かのためにというより、自分の興味を突き詰めたかったためです。やりたいことができるのは幸せではあるものの、誰かのためになることをしてみたい。そんな気持ちがどんどん膨らんでいったタイミングで、ちょうど特任助教の任期が切れたんです。再契約して残る道もありましたが、いい機会だと思って民間企業へ就職することにしました。その頃には、自分の研究も一区切りついていたことも背中を押してくれたと思います。 就職すると決めたものの、具体的に就職したい会社や仕事の目処があったわけではありません。手探りで様々な企業や仕事を探す中で見つけたのがテクノプロでした。正確に言えば、テクノプロの「データサイエンティスト育成研修」プログラムを知ったのです。入社後、2カ月間の座学研修と4カ月間のOJT、計半年かけて給与をもらいながらデータサイエンティストとしてのイロハを学ぶことができる。これは是非参加したいと思いました。研究で使用するPCのセットアップは頻繁に行っていたため、ネットワークやサーバの知見はありましたが、データサイエンスに関してはほぼ素人。加えて、民間企業での勤務経験もないので、その慣らし期間としてもぴったりだと思ったんです。
![[076]Project-Stories-1](https://images.ctfassets.net/7z4do5alg1qg/1IdniYubP7rw9LK6gMlO0Z/c53cea36350b5b59aacbab19577fd5af/-076-Project-Stories-1.png)
希望を叶えるためには、まずは与えられた場所で成果を出すこと。
研修制度が魅力的だったこともありますが、データサイエンティストという仕事に惹かれたのも、入社を決めた理由の一つです。会社説明の場で印象に残っているのが「データをもとに新しいビジネスを作っていく人がデータサイエンティスト」という言葉でした。もともと研究者だったこともあって、既にあるレールの上を走るのは性に合わない。アカデミアから民間企業に場所を変えても、新しいことに挑戦したい私にとってデータサイエンティストは天職ではないかと感じました。 そうは言っても、入社直後はまだまだデータサイエンティストとしては駆け出しですので、大きなプロジェクトは当然任せてもらえず、最初の頃は通信やアルゴリズムの高速化等のシステムエンジニア寄りの仕事をしていました。ただ、いずれは自分で新しい価値を生み出したいと思っていたので、先を見据えながらモチベーションを高く保ち、まずは与えられた仕事で結果を出すことに注力しました。幸い、研究職で培ったサーバやネットワークの知見がそのまま活かせたこともあり、比較的早い段階でクライアントから評価を得られたと思います。
![[076]Project-Stories-2](https://images.ctfassets.net/7z4do5alg1qg/4n88j32EWMy7mkUVEptK6f/f7622200ceb1bb6d023f48bee6110127/-076-Project-Stories-2.png)
先回りした提案が、ビジネスを生み出す力を養う。
ある程度仕事でも成果を出し、実績も積めたタイミングで会社に「提案できる余地が大きい仕事がしたい」と伝えたところ、別のクライアントにアサインしてもらうことができました。任されたのは、データアセスメント。クライアントから様々なデータを少しずつもらい、実施したい分析の可否や、実施のために必要なデータや手法の確認、検討を行う仕事です。 担当業務は、前のプロジェクトに比べればデータサイエンティスト寄りでしたが、提案よりは確認作業という面が大きかったです。それでも、依頼業務をこなして終わりにするのではなく、「現状のデータに加えて、他のデータも揃えられれば、ビジネスチャンスがもっと広がりそうです」と自分なりのアイデアを付け加え報告するようにしていました。クライアントにはそこまで求められていませんでしたが、いずれビジネスを生み出せるようになるために、目的を掲げることで視座も上がり、同じ仕事を頼まれてもアウトプットが変わっていく。そんな経験をさせてもらいました。 今はクライアント先からテクノプロに戻り、ソリューション事業を担当していますが、引き続きプラスアルファの提案を意識しています。つい先日も、クライアントから各種データの管理を自動化したいと相談があったのですが、ツールだけではなく根本のデータ収集や管理方法から提案しました。話を聞いてみると、領域ごとに異なるシステムに点在するデータを、人力で一つずつクリックしてダウンロードしながらデータを集めていると。一人が丸一日張り付いて、3日もかかると言うのです。ツールを作るだけでは、この状況は解決できないと思いました。新しいビジネスの提案ではありませんが、こうしたお客様のニーズを先回りする提案を続けることで、ビジネスの種を見つけ出す力が養われると信じています。
![[076]Project-Stories-3](https://images.ctfassets.net/7z4do5alg1qg/7HNw55Q6fGaIrTbYQVJXwK/418d0d7950cd7fd5a827002ea6cd1f4e/-076-Project-Stories-3.png)
自分で自分の仕事を自動化していくジレンマから抜け出すために。
この仕事に興味を持った理由でもあり、今も目指し続けているのが、新しいビジネスを生み出すこと。ここにこだわる背景には、私が感じているデータサイエンティストのジレンマがあります。データサイエンティストは、蓄積したデータを分析、活用しながら効率化、オートメーション化を進めるのが仕事です。そして、この業務には自分たちの仕事も含まれる。つまり、データサイエンティスト自身の仕事量を減らし、さらには無にすることを、自分自身で行っているということです。 様々なデータ分析もAIによって自動化されるようになった未来を想像してみてください。「データを分析できる」だけのデータサイエンティストの仕事は無くなるはずです。だからこそ、データ分析技術はあくまで一つの武器として、そこから新しい価値やビジネスを生み出せるようになることが、データサイエンティストに求められていると思っています。 お客様と密にコミュニケーションをとり、顕在化しているニーズだけでなくクライアント自身も気付いていないニーズを汲み取る。そのニーズを満たすための方向性をお客様とディスカッションしながら組み上げていく。それこそが、AIでは決して代替できないものであり、私たちのコアバリュー。ツールを用いてデータを分析、活用するのは最後の最後。その前段でどれだけ価値を発揮できるのか。これからもそこにこだわり続けていきたいと思います。
![[076]Project-Stories-4](https://images.ctfassets.net/7z4do5alg1qg/5nfRbySBRgIRkayaouW29w/dbd7a9d3f8e1ae83be7c2da4fdc9af63/-076-Project-Stories-4.png)
今後の目標
何度もお話ししているように、新しいビジネスや、価値を生み出すスキームを作るのが私の目標です。そして、その価値の提供先をいずれはクライアントではなく、社内に向けたいというのが一番大きな夢。アウトソーシングというサービスは、コンサルティング会社に似ている部分があります。共に、有期のプロジェクトにアサインされ、専門知見を持って課題を解決する。それにもかかわらず、業界イメージには大きな開きがあるように感じています。それを是正するためにも、自社の社員一人ひとりが持つスキルセットや実績を可視化して、正しい評価を得られるプラットフォームを作りたいですね。 <株式会社テクノプロ テクノプロ・デザイン社のSIGNATE Campus掲載情報はこちら>