2019年、政府が発表した「AI戦略2019」は、国として数理・データサイエンス・AIに関する知識及び技術を進歩させていくことで、世界への貢献と課題克服、さらには日本の産業競争力の向上を目指すというものだ。高等教育においては「文理を問わず、全ての大学・高専生(約 50 万人卒/年)が、課程にて初級レベルの数理・データサイエンス・AIを習得」が具体的な目標の一つとして掲げられ、現在、各校が数理・データサイエンス・AI教育プログラムについて、学生への教育機会の提供を進めている。 内閣府、文部科学省及び経済産業省では、各校が推進する数理・データサイエンス・AIに関する知識及び技術に関する体系的な教育プログラムの中で、優れたプログラムを認定する「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」を創設した。文部科学大臣が選定および認定して奨励することで、数理・データサイエンス・AIに関する基礎的な能力を向上させる機会の拡大を狙いとするものだ。 この認定制度は2020年度の実績を基に2021年度から認定が行われ、その第一回認定を受けた大学はわずか7校。そのうちの一校が、広島工業大学である。全国に先駆けたAI教育への取り組みは、どのような経緯から始まったのか。そしてその一環で、教材の一部として「SIGNATE Quest」の導入を決めた理由について教育現場の生の声を伺った。

政府の方針に即応し、社会貢献を目指した。

林:本学には、私の所属する情報学部情報コミュニケーション学科のようにデータサイエンスを専門分野とする学部や学科があります。そうした学部では、以前からデータサイエンスについて専門的な教育を行っていましたが、全学部・学科がAI関連の教育を行うようになったのは2020年度からです。 松本:きっかけはいくつかあるのですが、2019年に政府から出された「AI戦略2019」が大きかったと思います。国として、文理関係なく全学生が数理・データサイエンス・AIについての基礎を学ぶ環境の構築を推進します、と宣言したわけですから。 林:加えてちょうど2020年から、未来を切り拓く人材を育てるための、本学の新たな教育プログラム「HIT.E ▶2024」が施行されることになりました。その一環として、全学部全学科の1年次生が初級レベルのAIやデータサイエンスを学べる「Society5.0時代に向けたAI・データサイエンス入門教育プログラム」という教育プログラムを開設することになったのです。 松本:元から本学が目指しているのは、社会で役に立つ教育。教育方針にも「常に神と共に歩み、社会に奉仕する」を掲げている通り、社会への奉仕に繋がる実学を学んでもらいたいと考えています。そのため、昨今の社会におけるデジタル化の進行を鑑みると、数理・データサイエンス・AI教育に力を入れるのは自然な流れだったと思っています。

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どの学部の学生も、学習意欲が高まるような教育プログラムを。

松本:全学部で数理・データサイエンス・AIを学べるようにしましょう、といってもそう簡単な話ではありませんでした。特に難しかったのは、それまで数理・データサイエンス・AIをそれほど学んでこなかった学部で、どのように教育を行うかという部分です。 林:工学部や情報学部以外の学部では、AIやデータサイエンスとは無縁と考える学生が多いのではないかと考えていました。そのため、学習プログラムでは身近な活用事例を交えながら、数理・データサイエンス・AIに対する学習意欲の向上を目標にしました。数理・データサイエンス・AIを学ぶ意義や、その面白さに気づいてもらうことで、学習に対する動機付けを行う。そのような教育プログラムの構築を目指しました。 松本:学習意欲を持たせるために必要だと考えたのは、学部ごとに教育を最適化することでした。レベルが低すぎてもつまらないですし、高すぎると諦めてしまいます。また、難易度だけでなく内容自体も、各学部で専門的に学ぶ内容と関連づけられるよう工夫することで、興味を湧かせられると考えました。 林:教育プログラムを考える上で、もう一つの懸念が受講者数の多さ。全学部で受講させるというのが大きなポイントであり、そうなると単年度でも受講者数は1,000名を超えます。 松本:学部毎にプログラムを最適化でき、大人数でも受講しやすい教育プログラム。その両方を満たしていたのがeラーニングであり、「SIGNATE Quest」だったのです。

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学部別の最適化のしやすさと県庁での採択実績が決め手に。

林:eラーニングであれば、オンライン環境さえあれば誰でもどこでも受講することができるため、全学部を対象としても問題なく実施ができます。さらに、用意されているコンテンツの取捨選択により学部毎の最適化もしやすい。私たちの求めている教育にフィットしていると感じました。ただ、これらの特徴は他のeラーニングにも当てはまります。ではなぜ「SIGNATE Quest」を選んだのかというと、社会への奉仕に繋がる実学を学ぶ教育方針に最も合致しているサービスだったからです。 松本:本学では社会への貢献を目指した教育を行っていますが、特に地域社会への貢献を大切にしています。産学連携推進センターを設置していたり、1カ月にわたり企業で就業体験を行う「産学連携実習」というプログラムを用意したりと、地元企業と密な関係を築きながら教育・研究を進めています。今後は広島県庁とも連携をとりながら、さらに地域社会に役立つ教育を目指していきたいと思っています。その観点で、県庁主導のプログラム「ひろしまQuest ※1」での採択実績のある「SIGNATE Quest」は地域社会に貢献できる教育に役立ってくれるだろうというのが決め手になりました。また、オンライン上で教材を読み進めていくだけでなく、ワーク形式の課題も複数用意されている点も魅力に感じました。手を動かしながらAIの面白さを知ることができるため、学習意欲向上を目標に掲げる本プログラムに最適だと思っています。 ※1 https://hiroshima-sandbox.jp/hiroshima-quest.html

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地域に貢献できる教育を目指して、さらなる進化を。

松本:導入後の手応えも感じています。受講した学生への授業アンケートでは、学習目標に対して96%が「達成できた」「ほぼ達成できた」と回答。「SIGNATE Quest」の全コンテンツを解放しつつも、どのコンテンツを必修とするのかは各学部の判断に委ね、現場の判断で最適な活用法を見出してくれた結果だと思っています。 林:これらの取り組みの成果や振り返りについてまとめ申請したところ、「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」の認定をいただきました。第一回目の認定をされた大学は、本学を含めてわずか7校。国として目指すAI教育を体現できている一つの証になると考えています。 松本:ただ、これはあくまで数理・データサイエンス・AI教育の入口部分。学習意欲を高めた後の、専門的な教育も見据えて進化させていきたいと考えています。実際に、高度な技術を修得したい学生向けに、3年次生以上を対象とした応用プログラムを用意する等、既にいくつかの取り組みも始めています。今後は地元企業にもヒアリングを行いながら、地域に役立つ数理・データサイエンス・AI教育を実現すべく、さらに磨きをかけていきたいと思います。

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「SIGNATE Quest」を検討している教育機関へのメッセージ

林:「SIGNATE Quest」のメリットとして、ただ知識をインプットするだけではなく、ワーク形式で自分の手を動かすことで、AIの面白さに気づくことができるという点があると思います。AI・データサイエンスへの興味喚起という観点でも有効だと思います。 松本:eラーニングは通常、プログラム単体で学習を完結させられる仕組みになっています。しかし、教育現場で導入する際は、学習する意義をしっかり伝え、一人ひとりに合わせた内容で教育することが大切。その設計をしっかりとした上で導入することが重要なポイントだと思います。 <法人・団体向けSIGNATE Questについて詳しく知りたい方はこちら>

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